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MS20 Clone VCF 2


MS-20への熱い想い


テスト版。ちいせー!クリッパのダイオード
にはLEDを付けてみた
1978年に、徹底したローコスト戦略の基に設計されたMS-20の最初のバージョンではVCFにOTAを使わずにトランジスタを電圧制御抵抗素子として使っていたそうで、これが、コルグの特注のカスタムチップが使われていたそうで、現在でも古い楽器の修理やを悩ませているそうだ。

ドイツ在住のJugen Haible 氏が(氏のページはこちら)で紹介されている氏のオリジナルシンセサイザJH-720 Solo Synthesizerで採用したVCFは、このコルグのMS-20の初期型のVCFのクローンを意識して作られた。

また、これには後日談があり、やはりドイツ在住のMartin Czech氏(ホームページはこちら)が、コルグの当時の設計者にメールして、個人で楽しむ範囲の中でという制限つきでこのカスタムチップの回路図を頂いたのだそうだ。このカスタムチップの内部の回路図のほか、入手にいたる経緯なども氏のページで公開されている。

注目すべきは、コルグのユーザーに対する柔軟な対応だと思う。
僕も学生時代に、ローランドのCMU-800のクローンマシンを作るべく、当時秋葉原にあったサービスセンターで回路図のコピーを頂いたことがある。この図面を基に、リズム音源部分をはしょって、NECのPC-8801という8ビットパソコンの拡張スロット専用の音源ボードを作った経験がある。制御にはCMU-800の制御ソフトがそのまま使えるので、USO-800とネーミングした。パソコン丸ごとに処分しちゃったのが残念だ。

組み立て


小さい!!こっちはリミッターには普通のスイッチ
ングダイオードを使っている。ノーパン

Jugen Haible 氏のオリジナルには付いて無かったレゾナスの係り具合を調整するトリムを追加した。
SteinerVCFでの音作りの実験から、音つくりの上では、一味違ったプラスアルファの要素にはなるが、基本的な音作りにはHPFは要らないという判断と、Dual OTAを使ったMS-20CloneVCFとコネクタを差し替えるだけで動かせる仕様の方が魅力的だったことから、これに完全互換のPCBのデザインとして、HPFの入力は省略した。抵抗1本で追加できるし、コネクタも1ポート余っているので2台目のフィルターなら、各自追加してみてほしい。
また、Q2、Q3は温度結合しやすいように並べて配置できるように工夫した。背中合わせになってしまい、チップの名前が見えなくなってしまうのが残念だが、これが一番密着度をあげることができる。動作する事を確認してからアロンアルファなどで張り合わせてしまう。
さらに、ホットボンド等で皮膜をかぶせたり、エポキシ系の接着剤でモールドしてしまうのもありかも知れない。僕は、トランジスタは十分に密着し、お互いの熱の変化を相互に交換できるようにしただけで、モールドをしない。すでにプラスティックのモールドがしてあるのだから十分。この抱き合わせトランジスタをくるむように発泡スチロールのシートでパンツを作って穿かせてみる。トランジスタとパンツの間にできる空気の層の断熱効果を期待している。

脱げそうなユルパン。むしろ、鞍馬天狗の頭巾?
この2本のトランジスタは一応、Vebの値を3桁のデジタルテスターで0.0mVの誤差のものを選別した。メンテナンスの際はマッチした2本まとめて交換するので、不可逆なモールドも問題ない。

PNP トランジスタには2SA1015、NPN トランジスタには2SC1815を使った。余談だが、少ない経験ではあるが、hfeは低いランクの物の方が、Vebの値が揃いやすいようだ。GRランクは10本まとめて購入しても2ペアが2-3セットとれるぐらいだが、Yランクだと3ペアが2セットぐらい取れる。
毎度お馴染みの田中さんのページの解説(* TRANSISTOR *の項)によれば、後段から前段へ電流が流れ可変抵抗素子として使っているトランジスタの抵抗値が変る。これの影響を相殺するために、Cの調整が必要になるとの事で、Jugen Haible 氏の回路でも違う値が使われている。
この抵抗値は3倍違うのだそうで、コンデンサの容量はそれぞれのカットオフ周波数を合わせるために1/3にしなければならない。ここでは、30nに対して10nになるが、30nの替わりに33nを使っており、ここで、すでに10%の誤差がでており、さらに、10n、33n双方のコンデンサにはの額面の容量にさらに規定(?)の誤差が含まれている。一方、TRのVebの誤差は、1mV違うごとにIcは4% ずれ、dynamic resistanceも 4% ずれる。(上記、田中氏に直接ご指導いただきました、ありがとうございます)。
正確を期すのなら、相対誤差の無い4本の10n程度のコンデンサを選別し、3本を並列にして3倍の値を得て、トランジスタのほうも選別することになる。
のりで張り合わせる程度の熱結合だけはやっておいてソンは無いと思うが、もともとは、「どうせくっ付けちゃうなら選別しとけ」、という投げやりな理由だったので、面倒ならYランクのもので同時期に購入したものを使えば選別の必要は無いかもしれない。実は、実験中に片方のトランジスタ飛ばして違う銘柄のTRをつけて動作確認をしたが、なんか、音はでた。突っ込んだ音作りを始めた時に微妙な部分での不具合がでるかもしれない。

現在、Jugen Haible 氏は、すべての鍵盤に1Voiceを割り当てると言うkorgのポリシンセPSシリーズのクローンを製作しており、このフィルター回路に同等の回路(よりオリジナルのKorg35に近い、NPNを3本使うタイプ)を採用したそうだ。これの制作のために、VCA、VCFに使うTRはどちらも、Vebで選別したトランジスタを使っているそうだ。

複数ポールを重ねるフィルターの場合、複数のカットオフ周波数がずれていると(この場合、トランジスタのVebがずれていたり、コンデンサの値が1:3になっていない場合)持ち上げる場所が1点に集まらないために発振できなかったり、発振した時の波形が崩れていて綺麗なサイン波が出なかったリのトラブルになる。
一方、正帰還型のフィルターである事からフィードバック掛け過ぎると爆発的に音量が上がってしまうので、発振そのものをさせないようなセッティング(たとえば、敢えてカットオフ周波数を合わせない?)がベストなのかも知れない。



調整

VCOのオクターブの調整は、アッテネータの分圧比を替えて1V/Octのレスポンスを得るが、この回路でも同様に、R11を、1.8kグライに付け替えれば(CVの入力に接続される抵抗が100kだから。詳細はVCOIIIのレポート「1V/Octへの変換部分」を参照のこと)1V/Octのレスポンスを得ることができる。
が、試して見たら、2.2kぐらいでちょうどいい感じ。100kがいくつか並列になってるから、だろうなあ、ぐらいにしかまだ原因はつかめていない。ここではあくまで試行錯誤の実験の結果の報告にとどめ、なぜそうなるのかは後日検討したい
Trim1の動作に付いてJugen Haible 氏に問い合わせてみたところ、低すぎる周波数まで落ちないように設定する物で、最終的には耳でチェックするのだそうだ。
この部分、PNPのエミッタフォロアにNPNトランジスタが繋がる形になっており、アープのマッチドペアアンチログアンプと同じ形式になる。(実際の動作は複雑で、完全理解への道ははるか遠い)

発振の深さを調整するTrim2は、高い周波数では発振して無い(または発振していても気が付かない?)のに、その状態で周波数をさげるとブモーとか発振してしまうので、低い方で発振ギリギリに調整するのがいいかもしれない。
低い方ではたっぷりレゾナス掛かるのにうえに行くとレゾナス足りない傾向になるかもしれないが、CVでスイープする事を考えると、どの帯域でも発振し過ぎないような調整にしておくのが使いやすいとは思う。各自、自分の音を作るべく突いてみる。
C2とR14の値も発振に関しては重要な役割を担っているようだ。適当に替えてみたが、よく分からないので止めてオリジナルの値をそのままとした

僕の工作では1台目にYランク(hFEが100〜200程度)のトランジスタを使ったが、本番では、GRランクの物を使った。実測で、それぞれ521と521だった。Vebは、572mVのものを選んだが、hFEの違いのせいか、テスト版では発振を押さえられたのに、220k+100k(半固定抵抗)では、帰還する量がまだ押さえ切れないらしくて、100kの半固定では絞り切れない。使うトランジスタのhFEの値によっては、220kは、180kに変更した方がいいかも知れない。
また、発振の深さは、終段のオペアンプの増幅率を変えて調整するような設計としたが、ここは固定にしてトータルの音量を作り、フィードバックの深さは、R13の220オームを変更する方法も有るそうだ。ここの抵抗値は、C2とR14とセットでフィードバック量を落とすアッテネータになっており、フィルターの動作とは直接関係ないのだそうだ。追試される場合にはこの方法も試されたい(ぜひ、レポート下さい)

DualOTAを使った版とパネルを共有できるかどうかのテストでは、 レゾナスのつまみの動作が大変シビアで、Jugen Haible 氏のオリジナルの通り10k(B)に2.2kを付けて疑似Cカーブを作らないと大変使いにくい。基板側に、コネクタの裏の部分に2.2kをハンダ付けしてしまった。
ただ、これさえやれば、大変スムーズな操作感。

これが、ディスクリートのダイゴミ!、(モエナイゴミか?)とか言いながら、自分だけの1台にするべくいろいろ突き回してみてほしい。

評価

確認はしていないのだけど、多分同じ設計者が同じ意図の元に設計した物だからだろうけど、全然違う回路なのに、その音のキャラクタは驚く程ににている。正直言って、自分で組み立ててみたにもかかわらず、出て来た音だけで、ブラインドでチェックして聞き分けられないと思う。DualOTAにくらべて若干モヤっとした感じの音かも知れない。もっとも、同じ商品として売られていたわけだから、そんなに音のキャラが違ってしまったら違う楽器になってしまう。これが正解なのだろうなあとも思う。
僕の楽曲の制作の中で、シンセの音は録音によっては際立ち過ぎてしまい他の楽器の音色とのマッチングのために敢えて「汚し」といわれる、わざとローファイ化する処理が追加で必要になるシーンもあることから、明るい音色であることが必要条件には入らないともいえる。

回路の構成から、CV信号ががオーディオの出力に漏れるはずなのだけど、僕の組立てでは、7VのゲートをCVに突っ込んでみて、オーディオの出力への漏れは1mV以下のオーダーのようだ。
厳密にやるぞと、カップリングのコンデンサ(C5)の内側、オペアンプの出力に直接テスターを当ててみたら常時6mVほど漏れてる。ゲートを入れた時にプラス方向に15mVほど増え、ゲートを切った時にマイナス方向にぶわっと振れる。多分、トータルで30mV以上漏れていんじゃないかしら。厳密にはオシロでチェックしないと分からない。
確かに漏れはあるが、楽曲の中では聞き分けられないレベルかもしれない。

カットオフフリーケンシーの設定については、回路的に簡略化されているから当然ながら、DualOTAは発振させてメロディーの演奏に使える程リニアに反応一方、この版ではちょっと渋いと言える。
もっとも、細かい調整のトリマーも付けなかったからで、ちゃんとつければ、数オクターブのなんちゃってサイン波VCOとして使える可能性はあるとは言える。もともと、Hz/Oct系の設計の物で、一応アンチログ的にも反応する程度のつもりのモジュレーション専用の入力に突っ込んでいるのだから、これは音作りに支障のない範囲で追従すれば、OKと考える割きりもまた気持ち良い

安くてコンパクト、音も悪く無いと、良い所ずくめにも見えるが、トランジスタの特性が生に出過ぎているのか、使うパーツ(例えば、トランジスタのhFEのずれ等)によって同じに組み立てても動作が結構変わるようだ。これは、自作する上では、OTA版に比べてかなり大きなディスアドバンテージと言える。ポリシンセ用に複数台作るつもりなら、同時期に手に入れたパーツでワーッと組み立てれば問題無いかも知れないが、気が付いた時に手持ちのパーツでちびちび作る事を考えると、チャンネルごとに調整が難しくなったりするかも知れない。
1台こっきりの製作でも、出来上がった回路から出てくる音が本当に作者が意図した音はともかく、操作性では無い可能性ものこる。


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このページの実験では本文内にも紹介しました通り、田中氏ならびに、Jugen Haible 氏には並々ならないアドバイスを頂きました。この場を借りましてお礼申し上げます。
"MS20 Clone VCF 2" Copyright 2002,2003 Motohiko Takeda, Crow Hill Laboratory
Motohiko Takeda Mail:takeda@aleph.co.jp